機械学習はQCとして使えるか?【製造業】

キャリア・仕事

私が製造業のまさに製造現場で勤務していた時代、機械学習をどのように活用できるか悩んでいる時期がありました。

私のいた工場でもそうでしたが、製造現場においてQC(品質管理)の考え方は統計学に基づいていることが多く機械学習が使われるのはごく一部かもしれません。

 

 

QCとは?

製造の現場において製品を全く同じ品質で末永く作り続けることは非常に難しく、作り続けているとどうしても品質のばらつきが発生してしまいます。

QCは品質管理と訳され、許容される範囲内で品質を維持し続け、また範囲を逸脱してしまうものが発生した場合にどのように改善するか、ということを考えていくのがQCの基本です。

具体的には製品の性能や寸法といった測定値を常にモニタリングしています。モニタリングしている代表的な例を挙げると、

  • 平均値、最小、最大値はいくつか?
  • 最小、最大値は決めれた範囲に収まっているか?
  • 品質のばらつきはどうか?
  • ばらつきは3σや6σ以内に収まっているか?

などです。

これらの測定値に対してQC七つ道具と呼ばれる問題を見える化する手法を使って管理していきます。

◆QC七つ道具

  • グラフ
  • パレート図
  • ヒストグラム
  • 散布図
  • 管理図
  • 特性要因図
  • チェックシート

※詳細は省きます。

 

 

機械学習とQCの使い分け

一方で、機械学習はこれまでの製造データや測定データを利用して製品の品質をチェックすることができます。

機械学習は通常の教師あり学習のように使い方をする際には、製造条件や製造データから目的変数を予測することができます。

この目的変数にあたるものを、例えば「製品検査の良/不良の判定」や「測定結果」とすることで実際に検査や測定をしなくても結果を予測することができるという使い方になります。

しかしながら、機械学習は精度100%で予測することは非常に難しいという欠点があります。

つまり、機械学習を使って製品検査をした結果、誤った判断がされる可能性があるため、直接的な品質判断には適さないということになります。

それでは機械学習はQCと比べて劣っているのか?

結論から言うとそんなことはなく、機械学習とQCとでは使用目的が異なるというのが正しいです。

 

機械学習:予測を上手く使ってコスト削減効果を狙う
QC:品質判断などほぼ100%が求められる用途に用いる

 

それでは、機械学習を使うことがメリットとなる例をいくつか紹介します。

 

 

機械学習例① 製品を実際に作らなくても判断が可能

例えば自動車や大型な機械を製造するケースでは、製品1個を製造するのに非常に時間とコストがかかることあります。

そのようなケースでは製品が出来上がった後に品質検査をしても、結果NGとなってしまうと大きな損失となってしまいます。

できることなら事前に品質を予測することが望ましく、そうすることで時間とコストを大きく削減することが期待できます。

そこで機械学習の出番となります。

 

例えば、金属板の製造工程を例に挙げてみます。

以下の図のように金属を製造する過程の途中で品質の予測ができれば、全工程を行う前にNG品を取り除くことができて無駄なコストをかけずに済みます。

これを可能にするのが機械学習です。


(ステンレス協会HPより抜粋して加工)

 

機械学習に与えるデータとしては、連続鋳造以前の工程の次のデータが考えられます。

  • 原材料の種類、分量、配合比
  • 溶解の温度や時間、圧力といった製造条件
  • 精錬の条件

一方、QCの手法では仕掛品を工程途中で検査する必要があり、状況によっては検査自体できない場合もあります。

このようなケースでは機械学習を用いることでNG品(と予測された製品)を途中で取り除くことができ、大幅なコスト削減が見込めるでしょう。

もちろん、最終的にはQCの手法で品質チェックすることが望ましいです。

 

 

機械学習例② 複雑な条件下での要因を探る

製造業では品質検査の結果、NG品が多く出てしまうと工程に立ち戻って何が原因なのか調査をすることが必要となります。

原因の調査は製造工程が長かったり、工程が複雑にればなるほど難易度が上がり、時間とコストをかけなくてはいけなくなります。

このようなケースにおいて機械学習を用いると、機械的かつ効率的に要因分析を行うことが可能となります。

これは機械学習アルゴリズムが説明変数の関係性、パターンを分析していることを逆手に取ったような使い方で、目的変数の予測に影響の大きい項目を分析する(Permutation Importance)ことで要因分析に繋げることができます。

つまり、目的変数を「不良発生の有無」とか「性能の測定値」など設定しておき、何かしらの要因でこの目的変数の予測値が変化した際にその要因を説明変数から導きだすことができるのです。

ただし、要因分析をする場合の注意点として、目的変数に影響の与える要素を可能な限り細かく分解し、説明変数として設定することが重要となります。

機械学習を使った要因分析については以下の記事でも紹介しています。

 

 

まとめ

今回、機械学習とQCの違いについて2つの例を挙げて説明をしました。どちらも用途が似ていたとしてもその目的が少し異なっていることがわかってもらえたのではないでしょうか。

機械学習の良さ、QCの良さをそれぞれちゃんと理解して使い分けることが重要になります。

 

 

 

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